コピーライターをやめた糸井重里さん

仲畑貴志 ドラゴン東京


いまもそうなのか知らないのですが、ちょっと前まで糸井さんがテレビやマスコミに出るときの肩書きは「コピーライター」(ガキの使いのときは「C級コピーライター」)で、ゲームつくったり、作詞したり、埋蔵金掘ったりいろいろしてるけど、なんだかんだ言ってもイトイさんのアイデンティティはずっとコピーライターなのだなと思っていたのですが、それは誤解だったのかも。というのも、ちょっと前に偶然読んだ2008年8月27日のNBonlineのインタビュー「「ほぼ日」は、吉本隆明の思想の実践だった」

――それをうかがうと、1982年の西武百貨店おいしい生活。」のコピーを思い出しますが、現在の糸井さんの意識の中に、広告のコピーライター、糸井重里というものはありますか。

糸井 ありません。

――少し嫌そうなお顔になりましたか?

糸井 いや「ありますか?」と聞かれたから、「ないよ」って言っただけですよ。何もないです。

――ない、というか、嫌悪しているという気分はありますか。

糸井 してない。そういう仕事をしてきたんだけど、その時代が終わっている。終わっているのに、そのことに気付かないままでいるわけにはいかない、というだけです。何か人が喜ぶことを考えるという点で、やっていることはずっと同じなのですが。

 それは、歌い手さんがラジオで歌うか、テレビで歌うかみたいな違いはあるでしょうね、きっと。歌っていること自体は同じように、自分が何を喜ぶか、ということについては同じですから、根っこは変わっていませんが、よその人が作る商品で喜ぶことを考えるのは終わっています。

――いつ終わったと思われますか。

糸井 「ほぼ日」を始める前にいったん終わっていますね。

――何か具体的なきっかけはあったのですか。

糸井 バブル崩壊でしょう。バブル崩壊で、結局のところ、つまらないことで話がまとまるわけです。つまり、どんな広告を作るよりも安いものが売れたりするわけです。そのときに広告って意味がない。さらに言うと、安くするって、そこにすごい工夫があるわけではなく、誰でもできることです。広告が“安い”に負ける時代を迎え、あ、これはもうあかんな、というのがあって、一から鍛え直していきましょうというのが、次の仕事だった。これは長い物語になるんですけどね。

と、あっさり、自分はコピーライターじゃないと答えていたので、へえそうだったのかと意外だった。


肩書きを「コピーライター」にしてるのって、糸井さんの「いろいろやってるけど俺はコピーライターだ」っていう表明なのかと思っていたけど、単に世間に対して分かりやすいからそうしてたのかも。もっとも、よく知らないけど最近マスコミに出るときの糸井さんの肩書きは『「ほぼ日刊イトイ新聞」編集長』、『「ほぼ日」編集長』にしてるのかな。


コピーライターニ大巨頭のもう一人、仲畑貴志さんは名刺の肩書きが「クリエイティブディレクター」でも「クリエイティブディレクター/コピーライター」でもなく「コピーライター」となってるのは、まさに「ワシはコピーライターじゃあ、こらあ!」という意味だと思います。この前立ち上がった株式会社ナカハタの仲畑さんの名刺の肩書きはどうなっているんでしょうか。







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