「CMGOGO」は広告の自己否定か?

テレビCMで知ったのですが、電通が面白いことをはじめた模様。何なのかはとりあえず「CMGOGO」のサイトをざっくり見てもらったほうが早いかも。


要は、テレビCMを流したい人(事前登録して審査をパスした会社)が、インターネットから申し込むだけでCMの放送地域、放送期間を指定できる。さらに、すでに完成されたCM映像が何パターンも用意されていて、自分の会社の商品に合いそうなCM映像を選んであとは自分の会社の商品名とかキャッチコピーを「CMGOGO」にメールしてその映像に当てはめてもらえばCMがあっというまに完成するという。


費用は関東全域で15日間で合計10回のCMオンエアで、ぜんぶコミコミで525万円。安い。関東以外の放送局なら2週間で合計10回のCMオンエアで、ぜんぶコミコミで23万円から。すごいこと考えたなあ。


さっき知ったところだけど、このサービスについては広告をつくっている人間としていろいろ考えさせられることが多くて、なかなか考えがまとまりません。

  • 同じCM映像で会社違い、商品違い、コピー違いのCMが同時期にいっぱい流れたら、テレビを見てる消費者は混乱しないのか。
  • CM映像制作者は、商品にしばられずに自由に広告っぽい映像を制作できる。でも競争原理が働くから変なものは出てこない(はず)。テレビ版レンタルフォト。
  • CMなんて基本的に映像なんて商品と関係なくても何でもよくて、大切なのはその映像にどんなメッセージ(キャッチコピー)を付けるかのほうなんじゃ?ということにクライアント様と一般消費者がなんとなく気付く。
    • それによってコピーライターの重要性を理解してもらえる。それによってコピーライターのギャラが上がる。
    • 「CMGOGOでCM発注するから映像は決まってるから、あとはいいコピーよろしく」と、コピーだけの仕事が増える。
    • もっと商品寄りの映像&企画にしろとかクライアント様にあまり言われなくなる。
    • CMってこんな作り方でも成り立つんだとクライアント様や一般消費者が気付いてしまい、CM(&広告)業界が舐められる。
  • コピーさえよければ「CMGOGO」の有りモノ素材でつくったCMでも商品がヒットするかもしれない。そうすると日本のCMはどんどん制作費の安さ重視のCM環境になってしまう。
  • 「商品のことをしっかり語らなくちゃ。でもそうするといい企画が思いつかない・・・」という悩めるCMプランナーたちが「そうか、こういうことでいいんだ」と解放される。
  • 「CMGOGO」をヒントに、逆にコピーライターはコピー開発に煮詰まったときにテレビに流れるCMを音声OFFにして映像だけ見ながら自分の担当商品ならその映像にどんなコピーを入れるかみたいな発想法を採り入れて煮詰まり脱出。(すでに昔からやってる人いっぱいいるか?関係ない雑誌をパラパラと見る方法と同じだし)


でも結局、広告って差別化の極地みたいな性質のもので、広告代理店は必死に「こうすればライバルと差別化できますよ」みたいなことでビジネスをしてるのに、まったくの自己否定だ。同じCM映像素材の使いまわしで複数の会社の広告が成り立つとしたら、当然クライアント様は制作費の安い「CMGOGO」のようなサービスにシフトするだろうし、そうするとやっぱり日本のCMレベルは低下するように思う。電通は別に儲かればCMの質なんてものはどうでもいいということか。


半年間の期間限定サービスみたいだけど、今回は実験ということで、うまくいけばその後に本格稼働するということか。


考えがまとまらないまま終わり。