学園祭(2)早稲田大学 沢木耕太郎講演会「旅する力」
世界旅行研究会主催の早稲田祭特別企画、沢木耕太郎さんの講演「旅する力」を聴きに行きました。
若者でごった返す構内を進み、約30分前に会場に到着。700人だか、900人だか収容の大教室は開演を待つまでもなく満員。(ふだんテレビに出てない沢木さんでこの調子だと翌日の箭内道彦さん×中島信也さんの「NO Ads,NO LIFE」はもっとすごいことになると思って、ちょっと萎えた。もともと翌日は仕事で行けそうになかったのだけど。)
壇上に現れた沢木さんはどう考えても60歳には見えないイカす兄貴。講演の途中、山口瞳さん(元サンアドのコピーライター、後の直木賞作家)とのエピソードに話が及んで、その中の1つに「紀行文は前置きが長ければ長いほうがいい。もったいぶって書け」と沢木さんは山口さんから教えてもらったそうな。
今回の沢木さんの講演はまさにその教えを守ったもので、1つ1つの興味深い(そして長い)エピソードが始まるたびに、「話の先が見えないなあ。最終的に一体どういう結論とか教訓に落ち着くんだろう」と、ある種ハラハラしながら聴き入っていた。
(前から読もうと思ってるけどamazonでずっと品切れの)ジョン・クラカワー『荒野へ』をショーン・ペンが監督した映画『Into the Wild』、チェ・ゲバラの自伝映画『モーターサイクル・ダイアリーズ』を引き合いに、若さと旅というところから話に入って行った。『ソングライン』『パタゴニア』を書いたブルース・チャトウィンの話も出てくるかと思ったけど、それは出ず。
そのあと冒頭にも書いた、山口瞳さんに銀座のバーで会って「紀行文の要諦」を教えてもらった話とか、世界を放浪中の中田ヒデに対して「自分探しでしょ?」と揶揄する人は旅というものをしたことがないか、あるいは旅とは何かを分かってない人だとか、大沢たかおさん主演でドラマ化した『深夜特急』の放送と猿岩石ブームが重なって心配したけど、大沢くんはあの撮影を通してあの旅を自分のものにして成長したけど、猿岩石の旅は明らかにズルした部分が見えたから彼らを成長させなかったと思うとか、旅先で現地人に家に誘われたら付いて行くべきかどうやって判断するかとか、砂漠で迷って死にかけたとか、いろんな話が盛りだくさんだったなあ。
ほかのブログさんをチラ見したら、みなさん「経験がないことや若いことはむしろ財産。そこには自分の成長や新しい発見がある」という部分が響いていた模様。自分はすでにジジイなので、沢木さんが旅先で会った世界旅行中の金持ち夫婦の話が刺さった。
その夫婦は昔から世界旅行をしたくて、でも人生に忙しくてずっとできなくて、ある程度の年になってやっと実現した旅だそうな。その夫婦に「君は今までどんな旅をしてきたんだい?」と沢木さんが訊ねられて、香港からロンドンまで行った『深夜特急』ネタを話したら、夫のほうが絶望的な深いため息をついて、それを見た奥さんがなぐさめたという話。
いくらお金と時間があっても、年を重ねた自分にはもうそんな旅は一生できないという絶望。切ない。定年したら夫婦でゆっくりと旅行とか言ってないで、思い立ったときに旅をしておきましょう。かと言って、東南アジアあたりで外こもりになっては、もともこもないですけど。
あともうひとつは、旅でも人生でも、必ず予期しないことが起こる。その心構えをいつも持っているのと持ってないのでは、予期しないことが起きたときの対処の仕方がぜんぜん変わってくる。というような話も印象に残った。これは極端な解釈をすれば、死を日常の一部として生きられるかどうかということ(=人はいつか死ぬということを常に自覚して生きること)だと理解したけど、今だからわかるのであって20代でそんなことわかってる人は尊敬します。
講演のもうちょっと詳しい内容は、この方がうまくまとめられているような。あるいは、いろんなブログでどうぞ。
これで無料は、ちょっと贅沢な時間。つまらない映画が1800円と考えたら、2、3000円払ってもぜんぜん価値のある2時間でした。
リアルな自分探し…ではない
悲惨な物語を救う母の言葉
クリスは永遠の旅に出た
自由と孤独を求めて 〜ある青年の生と死の記録〜
これは、池澤夏樹さんの世界文学全集の一冊として2009年に出るので、待てる人は待ったほうがいいかも。
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これから旅に出ようとする若い人にも良し、またかつてバックパッカーを気取ったおじさんやおばさんには、なおさら良し
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溢れかえる物乞いに対してあなたはどう対処しますか?
非常に危ない本
おもしろいことは、おもしろいです。ただ・・・
初めてのバイト代で購入したと書いたレビューは有吉本人である
有吉サンのファンは必見蜋